訪問マッサージをしていると、患者さんやご家族から真剣な眼差しで、こう尋ねられることがあります。
「先生、治せますか?」
この一言には、今抱えている痛みや不安を何とかしてほしいという切実な願いが詰まっています。
同時に「信じてもいい人ですか?」という、施術者への信頼を探る気持ちも感じます。
「治る」と断言できない現場のリアル
訪問マッサージの対象となる方々は、高齢だったり、長く病気と付き合っていたりと、簡単には「治る」とは言いきれないケースが多いのが現実です。
痛みの軽減や動きやすさの改善は目指せても、病気そのものを完全に取り除けるとは限りません。
とはいえ、すぐに「治せません」と言ってしまうのも違います。
相手の心に大きな不安を残してしまいかねないからです。
信頼関係を育む“伝え方”
私が心がけているのは、「何ができるか」を具体的に示しながら、患者さんと一緒に前を向く姿勢を伝えることです。
例えば、こんな言い方をよく使います。
- 「できること」を具体的に話す
「完全に痛みをゼロにするのは難しいかもしれませんが、今より楽に動ける方法を一緒に探せると思います。」 - 一緒に歩む姿勢を示す
「焦らず少しずつ続けることで、変化が出る可能性があります。一緒に頑張ってみませんか?」 - 治すより“支える”を大切にする
「病気を治すというより、今の生活が少しでも楽になるようお手伝いするのが私の役目です。」
こうした伝え方は、患者さんの期待を裏切らないようにしつつ、「この人なら頼っていいかもしれない」と思ってもらうために大切だと感じています。
心に触れるケアのために
訪問マッサージは、単に身体をほぐすだけではなく、患者さんの不安や孤独感にも向き合う仕事だと、日々実感します。
施術中のちょっとした会話や、ひとことの声かけが、患者さんの心に大きな安心をもたらすこともあります。
「治せますか?」という問いは、体の痛みだけでなく「心を支えてくれますか?」というメッセージでもあります。
だからこそ、私たち施術者の言葉には、技術以上に“寄り添う力”が求められるのだと思います。